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The Borstlap/Bruford Project 公演 ≫Message ≫解説1 ≫解説2 ≫Photo ≫リンク
ボルストラップ=ブルッフォードの新デュオ・プロジェクト 初来日!
ドイツのメールス・ジャズ・フェスティヴァルにミケル・ボルストラップとビル・ブルフォードがデュオで出演すると知ったのは、今年(2003年)の初頭であった。この意外な組合せはメールス・ジャズ・フェスの音楽監督ブーカルト・ヘネンによるものなのか、アーチスト本人達の意思によるものなのか、僕は知らない。でも、このデュエットの演奏を想像するだけで僕はワクワクするし、曲を演奏するにせよ即興で演奏するにせよ、きわめてレベルの高い音楽を作り出すであろうことは想像に難くない。
6月に開催されたメールス・フェスは、今年も大盛況だったようだ。ミケルとビルは2日目のメイン・ステージに登場、大喝采を浴びたそうな。(この模様は雑誌『Overground』Vol.8に詳しいのでそちらをご参照されたい。)なんとも羨ましい。さて、そのデュオが飛行機代とホテル代をかけずに、日本で体験できるというのだ。嬉しいではないか。

ミケルの名前を最初に知ったのはハン・ベニンクを通してであった。1997年か1998年頃の話。ハン・ベニンクが好きなので、彼の入っているCDは極力購入するように努めていた時に見つけたのが『3』と題されたハンマーのジャケットのCDで、オランダのマイナーレーベルからリリースされているものであった。ミケルがピアノでハンがドラムス、エルンスト・グレラムという人がベースだった。聴いてみるとこのジャケットのハンマーの如く強力にスイングするピアノ・トリオ。これはいいアルバムだと思った。このときにミケル・ボルストラップの名前は僕の頭に強烈に刻み込まれた。その後彼はメジャーと契約し、溢れんばかりの才能を発揮した3枚組『GramercyPark』を発表し現在にいたっている。
ビルに関しては、僕はもうかれこれ30年近く聴いていることになるのか。イエスから始まってクリムゾン、ジェネシス、UK、ブルフォード、ロイ・ハーパーやらパブロフス・ドッグやらジャマラディーン・タクーマまで、とにかくビルが一曲でも参加しているとそのアルバムを購入していた。まあ今でもそういったところはあるのだが、昔より音楽的嗜好性がハチャメチャになっているので、とてもじゃないが購入しきれていないのが現状。全て買っているのはアースワークスだけかな。特筆すべきは80年代初頭(だったか中頃だったか?)のパトリック・モラツとのデュオ・アルバムだ。このスタイル、ビルは嫌いではないらしい。しかも、ジャズ。ビルが好きなのはアート・ブレイキーのブルーノート盤だったりするので、アメリカン・ジャズは彼の根っこのひとつにあって、彼のドラミングにそれは確実に滲み出てくるエレメントなのだ。

ミケルとビルがどのようにダイアローグをするのか、僕の興味はその一点だけだ。トリオ以上の構成になると、ミュージシャンが音を聴く耳は2楽器以上だ。例えばピアノ・トリオのピアニストはドラムの演奏とベースの演奏を聴かねばならない。これにサックスが加わったりギターが加わったりすると、ピアニストは聴かねばならない演奏がジャンジャン増えてゆく。全くスコア通りに曲を演奏する時は、別に他の人の音を聴かなくてもテキトーに誰かに合わせてりゃそこそこ上手に演奏できる。ところがジャズってのはそういうことではないのだ。いかに共演者の演奏を聴くか、そしてそれに対し自分はどういう演奏をするか、ジャズ・ミュージシャンは、そこに命をかけているといっても過言ではない。演奏が面白くなるかつまらなくなるかは全てがその耳の良し悪しにかかっている。話がずいぶんそれてしまった。結局何が言いたいかというと、デュオは聴くべき演奏がひとつであるので、ダイアローグが音楽の全てである、ということだ。常に「コンボでのソロ演奏者の単なるサイドメン」では居ることが出来ないということだ。(もちろん「音楽を作る」ということにおいて「演奏しない」ことはダイアローグに含まれる。)
ミケルとビルの音楽=デュオ=ダイアローグ。メールスのサイトからその時の音をダウンロードして聴いてみた。3分強のそのサウンドの断片はそれだけで実際僕を興奮させた。両人とも時間の経過と共に演奏がアツくなってくるのが分かる。これが目の前で展開されることを思うと、どうにも待ち遠しくて仕方がない。プリミティヴで、刹那的で、ダイナミックで、破壊的で、美しいデュオを期待している。
(18th Dec, 2004 沼田 順)