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David Jackson
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■DAVID JACKSON(デヴィッド・ジャクソン、DJ と略)

1946年英国生まれ。Van der Graaf Generator (VdGG と略)のオリジナル・メンバーで名付け親のクリス・ジャッジ・スミス(Chris Judge Smith)のバンドHeebalob でジャッジ・スミスと一緒に活動していた。ジャッジ・スミスがピーター・ハミル(Peter Hammill)に紹介し、VdGGに参加することとなる。その細身の体からは想像できないほど力強く、大胆、予想不能で型破りな演奏から「サキソフォーンのファン・ゴッホ」と当時の英国の音楽誌「New Musical Express」のジョナサン・バーネット氏によって渾名された。なぜ、ファン・ゴッホなのか。それはその演奏が従来の常識を大きく外れて、絵画における印象派を想起させ、また、狂気にも似たあまりに強烈なパワーを内包していることから、絵筆をサキソフォーンに持ち替えたファン・ゴッホだと称されたのである。ソプラノ、アルト、テナーのサックス類とフルートがメインの楽器。テナーとアルト二本のサックスを同時に吹き鳴らすダブル・ホーンが得意。近年はEMS社のサウンドビームや自作のジェリービーン・アイズといったMIDIコントローラを駆使した演奏もこなす。

■DJのディスコグラフィ

【VdGGの作品】

 1. 1969: "The Least We Can Do Is Wave to Each Other"
 2. 1970: "H to He; Who am the Only One"
 3. 1971: "Pawn Hearts"
 4. 1975: "Godbluff"
 5. 1975: "Still Life"
 6. 1976: "World Record"
 7. 1978: "Vital"
 8. 2000: "The Box"
 9. 2000: "An Introduction"

10. 1977 "The Long Hello"
11. 1984 "Time Vaults"

VdGGの作品は、いずれ劣らぬ名作であるが、やはり、第3期のアルバム3枚(4,5,6)がもっとも人気があり、かつ入りやすいものだと思われる。第2期の3枚(1,2,3)は、より混沌としている楽曲を含んではいるが、超人気曲である代表曲「Killer」「Refugees」「Theme One」はこの時期の作品である。とくに「テーマ・ワン」は、現在のDJのライブでも演奏されている。これらすべてのアルバムからの代表曲を一曲ずつ収録しているベスト盤「An Introduction」が入門者には最適と言えるだろう。

【ソロ作品】  (ライブ会場にて販売予定!)

1. 1982: The Long Hello Volume Three (LP)
2. 1992: Tonewall Stands (CD)
3. 1996: Fractal Bridge (CD)
4. 2002: Beams and Bells: Live at QEH (CD)
5. 2004: St.John's A to Z: Healthy Choices (CDR)
6. 2004: Batteries Included (David Jackson/Rene van Comminnee) (CD)

7. 2003: Guastalla:Live Tonewall and Soundbeam - Italy 23.11.2002 (2DVD)

ソロ作品は、最初の「LH3」を除くとすべてCDとして発表された。1992年の「Tonewall Stands」は、DJにとっては実質的なソロ・デビューの仕切りなおしのような印象を受ける作品。というのも、「LH3」で発表されたふたつの代表曲を再度アレンジしなおして収録しているからである。「LH3」では不満の残った音質的な問題もここでは解決されており、バックを固める友人たちものびのびと演奏している。ここで聴けるDJの基本的な音楽性はトラッドやブルーズにもクラシックにも通じるもので、VdGGの音楽の個性の大きな部分を占めた癖のあるフレーズの数々が随所にちりばめられている。陽気なVdGGとでも言うべき音楽がここにある。これがPHのもつシリアスな部分と相補うことでバンドの音になって言ったのかもしれないという推測が可能だ。

続く「Fractal Bridge」はPHプロデュースの下、サウンドビームを前面に持ってきた作品。とはいえ、通常ならキーボードが果たす役割をサウンドビームが果たしていると見る方がわかりやすいかも知れない。あくまでサックスやフルートがメロディーを奏でていることは代わりがない。ここで聴ける音楽はDJの持つもう一つの音楽性、すなわち美しいメロディー・ラインを軸としたもので、独特の節回しがその美しさをさらに引き立てている。サウンドビームは、こうもりの出すような超音波を用いてその反射の仕方によってMIDIをコントロールするものだが、DJは、これを用いて身体に障害のある子供たちのリハビリに活用したワークショップを欧州内で数多く行っている。

その活動の一環として行われた子供たちと一緒に行ったライブが「Beams & Bells」というライブ・アルバムである。プロのミュージシャンとしてはDJのほかベースとピアノで二人のみ。あとはすべて子供たちによるサウンドビームやジェリービーン・アイズ、アンヴィル・リングと名づけられた金床などの演奏が中心となっており、それにあわせて嬉しそうに演奏するDJのサックスが気持ちいい。最後の曲「Anvil Ring」はVdGG的な感動的な大作。

最新スタジオ作品である「A toZ」はレディングの小学1年生一クラス全員が作詞と歌で参加。子供たちから見た大人の悪癖、健康を害する行為全般についての歌をキーボードやサウンドビームを交えながら楽しく作成している。これもまたVdGG解散後に教師としても働いたことのあるDJのライフワークだといえるでしょう。

そのサウンドビームとサックス、フルートなど単独で演奏できる形でライブ・パフォーマンス用に開発されたのがTonewallシステムと彼が呼んでいるもの。MIDIの音源モジュールやエフェクタ類に加えてジェリービーン・アイズやパーカッションの小物などがそろっている。これを駆使して行われるパフォーマンスは2002年に行われたイタリアでのそれが映像作品「Guastalla」としてDVDになっている。ここではかつてのVdGG作品からソロ作品まで幅広い演奏を堪能できる。今回の来日公演もまたこのトーンウォール・システムを用いることになるが、日本ではより進化したコンパクトな形でのお目見えとなるだろう。


<その他の参加作品>

1. Peter Hammillのほとんど全部のソロ・アルバム
2. The Tangent " The Music That Died Alone " (2003 CD)
3. The Magic Mushroom Band: "Spaced Out" (1992/2004再発 CD)
4. Jakko: "Silesia"(1982 LP), 7"single3枚(1982-2983)

ここでは、PHのソロ作品以外について簡単に紹介しておこう。最も最近のスタジオ録音ということで、The Tangentの「The Music That Died Alone」を挙げておこう。これは3世代のプログレッシブ・ロックのミュージシャンが終結して作ったアルバムというコンセプトであり、Andy Tillison (keyboards and vocals)という人物。彼と仲間であるGuy Manning (acoustic guitar, mandolin and vocals)が中心となってフラワーキングスのRoine Stolt (guitar and vocals)やDJに声がかかったという形。VdGGとカンタベリーの音楽が大好きという二人の好みがもろに出た楽曲だが、ロイネのギターが入ることで現代的な響きが増している。70年代の音楽が持っているパワーと現代的な洗練されたものとがうまくバランスをとっている。基本的な楽曲の傾向がカンタベリー系なのでVdGG的な部分は少ない。しかしこのカンタベリーとVdGGの出会いは1982年のJakkoの作品ですでに完璧なまでに実現していたことを知る人は多くはない。このJakkoの幻の1stアルバムとそれに先行する3枚のシングルで聞けるDJの演奏はまさにVdGGの時と変わらぬもの。作曲されたフレーズを吹いても、ソロを吹いてもDJ以外の何者でもない音を聞かせてくれます。このコラボレーションの成果はDJの1stソロ「LH3」の中のA面、B面の最後を飾る大曲に反映されている。A面の「Sogni D'oro」はJakkoとDJの共作でカンタベリー的なアレンジの曲だが、作曲がDJなだけにカンタベリーではありえない展開が聞かれる。後半の二人のアドリブ合戦も聞きもの。B面の「Honing of Homer」は幻のVdGG曲として、ソファ・サウンドの歌詞のページのインデックスにそのタイトルのみが記されている曲。もちろんPHとDJの合作である。かつてVdGGとしてライブで一度だけ演奏されたことがあるとのこと。この2曲のためだけにでもぜひ「LH3」を探し出して聴いてもらいたい。これ以外にもイタリアのバンド「レ・オルメ」の「フェローナ・エ・ソローナ」のマスターテープにはDJの演奏が収録されていたそうだが、ミックスダウンの段階で、そのあまりの個性の強さに、アルバムの主体がバンドではなくなりかねないとして一切の演奏をカットされてしまったということが、今年レ・オルメのメンバーのインタビューで明らかになった。 (宮崎)