ヨーロッパ最先端ピアニストと舞踏家によるアナザー・ワールド、驚天動地の新体験

(photo: Volker Beushausen、Anna Katharina Frins)
ニック 「私にとって、ダンサーとのコラボレーションで興味深いのは、リズムと踊りというはっきりした関係ではなく、バランスと動きという微妙な関係だ。音楽のモチーフ自身が踊り手、或いは動物や幽霊のように動くかたわら、もう一方でミュージシャンが踊り手その人になるのだ。自分の指と身体そして心が楽器の上で踊るのだ。」
ニックが披露する一見ミニマルな反復演奏には、人間しかなし得ない隠し味がふんだんに含まれている。実はこの反復は、聴衆の集中と意識を呼び寄せるための仕組みであり、それにどこまで応えるかにより「聴こえる音」が違ってくるという何ともチャレンジングな音楽だ。
クラシックから始まり、ジャズ、ファンク、ロックとあらゆる音楽を経験し、吸収した上で新たに確立された「ベルチュ・スタイル」とでもしか呼びようがない音楽は、21世紀のデジタル時代における、ある意味極めてシニカルな、人間によるアナログ的逆襲だ。
このただ者ではないニックの公演に更に彩りを添えるのが、舞踏家イムレ・トルマンだ。アレクサンダー・テクニーク(体と心の使い方)を学んだ後、大野一雄(舞踏)と野口三千三(野口体操)に師事した彼は、舞踏というアートにおいて自意識を限りなく滅却することにより、表面的な肉体の存在を消し去ることに成功している。「そこにいるのは確かなのだが、それは彼ではない」、と見るものの感覚を疑わせるのだ。
ニックとイムレ、ともにスイス出身の二人の異才は、日本についての深い洞察をも共有している。そして、その二人が「精神の故郷」とも呼べる日本で共演する。さて、これを日本人はどう嗜むのか。
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ニック・ベルチュ
1971年、スイス・ツューリッヒ生まれ。8才よりピアノとパーカッションを学ぶ。1997年、ツューリッヒ高等音楽学校卒業、1989-2001年、ツューリッヒ大学で哲学・言語学・音楽を学ぶ。2003-2004年、日本に滞在。Ronin , Mobile という二つのバンドのリーダーでもある。現在はツューリッヒとベルリンに在住。 Ronin (ローニン)のニュー・アルバムがECMレーベル(日本はユニバーサル・ミュージック扱い)より今春リリース予定。
イムレ・トルマン
スイスのベルン生まれ。4年間様々な武道を学んだ後、アレクサンダー・テクニーク(体と心の使い方)学校で3年間学ぶ。1990年から日本において大野一雄(舞踏)と野口三千三(野口体操)に師事。1993年からヨ一ロッパや日本で舞踏のソロ活動を続けている。ベルリン在住。
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